平成22(受)78 求償債権等請求事件
平成23年11月22日 最三小 判決
裁判要旨
弁済による代位により財団債権を取得した者は,同人が破産者に対して取得した求償権が破産債権にすぎない場合であっても,破産手続によらないで上記財団債権を行使することができる
民法(抽出・加工あり)
(一般の先取特権)
第三百六条 次に〜債権を有する者は〜総財産について先取特権を有する。
- 一 共益の費用
- 二 雇用関係
- 三 葬式の費用
- 四 日用品の供給
(雇用関係の先取特権)
第三百八条 雇用関係の先取特権は、給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。
破産法(抽出・加工あり)
(定義)
第二条〜
5 〜「破産債権」とは〜破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権〜であって、財団債権に該当しないものをいう。
7〜「財団債権」とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権をいう。
(優先的破産債権)
第九十八条 破産財団〜につき一般の先取特権その他一般の優先権がある破産債権(〜以下「優先的破産債権」という。)は、他の破産債権に優先する。(使用人の給料等)
第百四十九条 破産手続開始前三月間の〜使用人の給料の請求権は、財団債権とする。
2 破産手続の終了前に退職した〜使用人の退職手当の請求権〜は、退職前三月間の給料の総額(その総額が破産手続開始前三月間の給料の総額より少ない場合にあっては、破産手続開始前三月間の給料の総額)に相当する額を財団債権とする。(財団債権の取扱い)
第百五十一条 財団債権は、破産債権に先立って、弁済する。
民法(抽出・加工あり)
(任意代位)
第四百九十九条 債務者のために弁済をした者は〜弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。(弁済による代位の効果)
第五百一条 〜債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償〜できる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。〜
従業員の給料
・破産法98条により優先的破産債権
・破産法149条により破産手続開始前3ヶ月分の賃金債権は財団債権(この意味は、下記、町村先生によると、「破産手続によらないで直接管財人に請求できる」との意味だそうです。)
〜弁済による代位の制度は〜求償権を確保するために〜弁済によって消滅すべきはずの原債権及びその担保権を代位弁済者に移転させ〜原債権及びその担保権を行使することを認める制度であり〜原債権を求償権を確保するための一種の担保として機能させることをその趣旨とするもの〜
〜弁済による代位により財団債権を取得した者は,同人が破産者に対して取得した求償権が破産債権にすぎない場合であっても,破産手続によらないで上記財団債権を行使することができるというべき〜
補足意見に下記の記載があります。
〜担保的機能とは,求償権確保のために原債権が譲渡担保の目的として求償権者に移転したのと同様の関係に立つと解するのが〜最も理解しやすい
早速、町村先生が、解説を書いておられます。
arret:弁済者代位が財団債権にも及ぶ事例: Matimulog