最高裁:相続分譲渡の効果・農地法の許可
平成11(行ヒ)24 不動産登記処分取消請求事件
平成13年07月10日 最三小判
裁判要旨抜き書き
1 ~相続分の譲渡に伴って生ずる農地の権利移転~は,農地法3条1項の許可を要しない。
2 共同相続人の共有の相続登記がされている農地につき,「相続分の贈与」を原因として共同相続人の1人に~他の共同相続人の持分の移転登記が申請された場合~農地法3条1項の許可~添付がないことを理由に~却下~できない。
~農地について,相続を原因とする所有権移転登記がされ,法定相続分に従って~持分の登記がされている。
~E及びFは,~自己の相続分全部をそれぞれ上告人に贈与~。
~上告人,E及びFは~登記原因を「~年~月~日相続分の贈与」として~持分の移転登記申請~許可書が添付~なかった。~却下~。
原審
(1)相続分の譲渡は,相続財産に対する包括的な持分を一括して譲渡するもの~個々の相続財産~共有持分の個別譲渡とは区分されるが~目的及び効果をみる限り,個々の財産に対する共有持分の移転を内包する財産権~行為~,農地法~に定める~所有権等の移転~に該当~
(2)~遺産分割は相続人全員の協議によるものであり~効果も相続開始時にそ及~,相続分の譲渡は一部の相続人のみによって行うことができ~効果もそ及しない。~
(4) 共同相続人間で相続分の譲渡がされ~登記名義が被相続人のままとなっている場合~許可書~なく相続を~原因として直接所有権移転登記を受けることができる~のが登記実務~それは不動産登記法~に準拠して行われている~,本件~登記を認めないことが,理由のない不平等~ということはできない。
最高裁
(1)共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは,積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転〜
〜譲受人は従前から有していた相続分と新たに取得した相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割に加わる〜
〜分割が実行されれば,その結果に従って相続開始の時にさかのぼって被相続人からの直接的な権利移転が生ずる〜。
このように,相続分の譲受人たる共同相続人の遺産分割前における地位は,持分割合の数値が異なるだけで,相続によって取得した地位と本質的に異なるものではない。
そして,遺産分割がされるまでの間は,共同相続人がそれぞれの持分割合により相続財産を共有することになるところ,上記相続分の譲渡に伴って個々の相続財産についての共有持分の移転も生ずる~。
〜相続分の譲渡により生ずるこのような法的な状態は,譲渡前に個々の不動産について相続の登記がされたか否かにより左右されるものではない。
(4)共同相続人間においてされた相続分の譲渡に伴って生ずる農地の権利移転については,農地法3条1項の許可を要しない