「時効取得」を登記原因とする所有権移転の登記申請の受否(要旨書き換え)
A→甲「昭和23年7月11日売渡」
甲→乙「昭和54年5月2日贈与」と登記ある場合に、
乙→丙「昭和23年月日不詳時効取得」を原因とするの申請は、受理されない。
(昭57.4.28、民三第2986号民事局第三課長回答)
この通達は、時効完成後に出現した乙に対して、時効を援用しているから受理されないのだと理解していましたが、どうも納得いかなくて、今回、解説を読み直してみましたが、やはり、そう言うことだったようです。
しかし、解説によると、
乙は、丙との対抗の関係を放棄して〜申請してきたものと考えられる。
としながら、
しかし、(この)ような場合には、甲から乙への所有権移転は成立しなかったものとなるので、〜まず、甲、乙間の〜移転の登記を抹消し、その後甲から丙への〜移転登記するか、あるいは〜乙から丙への「真正な登記名義の回復」を原因とする〜こととなろう。
としています。
この場合、一旦、実際に取得された乙の所有権を抹消する必要があるとすると、原因は何にすれば良いのでしょうか?*1
また、一旦、真実に取得した所有権が抹消すべきものとなったとしても、そのような場合にまで、「真正な登記名義の回復」を原因とすることはを認められないように思います。(訴訟や調停の場合なら別として)
乙丙間において、対抗関係の放棄によって成立する法律関係は、やはり「時効取得」となると思うのですが、これを認めず、甲の関与によるやり直しの方法しかないと言うのは、民法の考え方からすると行き過ぎであり、私権を制限するもののように思えます。
昨日の「真正な登記名義の回復」の話しではないですが、このような場合は、争訟性があるのが普通でしょうから、「和解」によることの可能性を考えるべきかもしれません。
実体法上、乙丙間のみにおいて「対抗関係を放棄する」ことが、私権の行使として認められるのであれば(そうあるべきだとは思いますが)、「当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約する」ことは可能であるべきですので、和解を原因としても、登記法上、脱法的ではないように思うのですが・・・・(今後、検討。)