Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

大審院:相続財産法人に対する訴え・特別代理人

昭和5年(ク)第545号 特別代理人選任申請却下命令に対する抗告事件
昭和5年6月28日 大審院決定
要旨抜き書き

 〜代表者がない法人である相続財産に対して訴訟行為をしようとする者は〜特別代理人の選任を申請〜できる〜。

原文(字句の編集あり。)
(抽出・加工あり。原文参照)

抗告理由

1、原決定理由によれば「〜旧民訴46条には訴訟無能力者〜相続人未定の遺産〜不分明なる相続人に対し訴を起すべき場合に法律上代理人あらざるときは〜特別代理人を選任すべき旨の規定存したるに拘らず、現行民訴56条(現行35条)に於て〜相続人未定の相続財産に対する場合を除外〜
民法1051条(現行952条)〜により〜相続財産の管理人の選任〜を以て足り〜特別代理人の選任を必要とせざるに出でたるもの〜

2、現行民訴56条制定の沿革〜改正調査委員会に於て審議の末〜1051条〜財産管理人選任〜為さしむれは足る。〜必要なしとの理由により〜削除〜此の沿革上の理由に囚はるるときは〜相続財産の場合を除外したる〜規定と解すべく〜特別代理人の選任を容ささるものと解釈するの外なからん。

然れども若し法規解釈の目的は立法者の意思を明にせんとすものに非あらず〜法規其のものの意義を明にするもの〜、敍上歴史的の事実には毫も膠着するの要なく〜法律として発表せられたるものに付き学理的に其の意義を確定すべきものなりと信ず。

〜然らば成文上〜58条(現行37条)に於て56条を準用する結果として〜代表者か欠けたる場合は相続財産たる法人なると〜其の他の法人なるとを問はず、総て特別代理人の選任を申請し得るものと解するが妥当〜、

〜相続人未定の財産に対する場合と他の未成年者〜禁治産者若くは一般の法人に対する場合とは〜特別代理人選任を必要とする理由に付き、毫も差異あることなし。
相続人未定の財産に付き民法に従ひ財産管理人の選任を申請するには多くの日時と費用とを要し、到底未成年者〜禁治産者法定代理人の欠けたる場合に〜後見人を選任の為の親族会招集を申請するの比にあらず。
〜制定の沿革には矛盾するやも〜といえども、〜成文上の解釈としても〜社会的需要に適応する点より〜むしろ法の精神に合致すべし〜

大審院

〜現行民訴56条は未成年者〜禁治産者に対し訴訟行為を為さむとする者が特別代理人の選任を申請〜得べき場合を定めたるのみに止とどまり、旧民訴46条の如く相続人の未定の遺産〜不分明なる相続人に対し訴を起すべき場合に〜特別代理人選任申請を〜得べき旨を定めたるものに非ざれども〜、

〜58条に於て〜法定代理及び法定代理人に関する規定は法人の代表者に〜準用する旨を定め、特に民法1051条に依る〜相続財産を除外せざるが故に〜相続財産の代表者なき場合に当然其の準用あるべく〜相続財産に対し訴訟行為を為さむとする者は〜特別代理人の選任を申請することを得る〜

〜1052条には〜相続財産の為〜管理人選任の申請を為し得べき旨を定めたるも〜訴訟行為を為さむとする者が其の選任を待つこと能はざる事由ある場合に於ては〜特別代理人の選任を申請する必要あるが故に管理人選任申請の途あることは〜58条に依り〜56条を右相続財産の代表者に準用するの妨げと為らず。

〜本件〜亡戸主Y外10名に対し土地所有権確認請求の訴を提起せむとすれども〜Yの法定推定家督相続人なし。然るに該訴の提起を遅滞するに於ては損害を受くる虞あるを以て〜Yに属せし財産の為特別代理人の選任を求むると云ふに在るが故に、其の主張事実の疏明あるに於ては〜相続財産の為特別代理人を選任すべきもの〜明白なり〜