平成26(受)865 清算金請求事件
平成28年07月08日 最二小判
裁判要旨
再生債務者に対して債務を負担する者が自らと完全親会社を同じくする他の株式会社が有する再生債権を自働債権としてする相殺は,民事再生法92条1項によりすることができる相殺に該当するか
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(抽出・加工あり。原文参照)
(1) 証券会社である上告人は,米国法人A〜の子会社〜
信託銀行である被上告人+証券会社であるB株式会社〜は,いずれもC株式会社の完全子会社〜(2) 上告人は,平成19年〜被上告人と〜基本契約〜を締結〜
(3)ア 一方の当事者の信用保証提供者が,破産決定その他救済を求める手続の開始を申し立てた場合には〜期限の利益喪失事由〜となるものとし〜全ての取引は〜手続の開始or申請の直前の時点で終了〜「期限前終了」〜
イ 〜期限前終了をしたときは,他方の当事者(乙)は,乙+その関係会社(直接的or間接的に,乙から支配(議決権の過半数〜)を受け,乙を支配しor乙と共通の支配下にある法的主体〜)が甲に対して有する債権と,甲が乙+その関係会社に対して有する債権とを相殺〜できる
原審
〜2当事者が互いに債務を負担する場合における相殺ではないが,再生手続開始の時点において再生債権者が再生債務者に対して債務を負担しているときと同様の相殺の合理的期待が存在〜,かつ,〜再生債権者間の公平,平等を害しない場合〜民再法において制限される相殺には当たらない〜
〜そして〜合意時〜関係会社を含めたグループ企業同士で総体的にリスク管理をすることを企図〜,本件相殺条項のような3者間の相殺を定めた契約は,分社化が進んだ金融機関のデリバティブ取引における慣行といえる程度に広く用いられていたと推認〜
〜再生手続開始の時点で再生債権者が再生債務者に対して債務を負担しているときと同様の相殺の合理的期待が存在するもの〜と認められ,かつ,再生債権者間の公平,平等を害するものであるとまではいえない。〜
93条の2②によって相殺が禁止される場合に当たらず〜92条により許容される〜
相殺は〜簡易〜決済〜両者の債権関係を円滑かつ公平に処理〜を目的とする制度〜
〜行使する債権者の立場からすれば,債務者の資力が不十分な場合においても〜確実かつ十分な返済を受けたと同様の利益を得ることができる点において,受働債権につきあたかも担保権を有するにも似た機能を営む〜。上記のような相殺の担保的機能に対する再生債権者の期待を保護〜は,通常〜再生債権者間の公平,平等な扱いを基本原則とする再生手続の趣旨に反するものではない〜,民再法92条は,原則として〜手続開始時において再生債務者に対して債務を負担する再生債権者による相殺を認め,再生債権者が再生計画〜によらずに〜優先して債権の回収を図り得ることとし〜別除権と同様に取り扱うこととした〜
〜92条〜①は「再生債務者に対して債務を負担する」ことを要件とし,民法505条①本文に規定する2人が互いに債務を負担するとの相殺の要件を〜採用〜〜
〜再生債務者に〜債務を負担する者が他人の有する再生債権をもって相殺〜できる〜とすることは,互いに債務を負担する関係にない者の間における相殺を許すもの〜92条①の上記文言に反し,再生債権者間の公平,平等〜原則を没却〜。
再生債務者に対して債務を負担する者が,当該債務に係る債権を受働債権とし,自らと完全親会社を同じくする他の株式会社が有する再生債権を自働債権としてする相殺は〜できる旨の合意があらかじめされていた場合で〜も,民再法92条①により〜できる相殺に該当しない〜。