Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

仙台高裁秋田:遺留分算定の対象となる「1年間」・減殺の権利濫用

昭和35年(ネ)第48号遺留分減殺請求控訴事件
昭和36年09月25日 仙台高秋田支判
判示事項

1.停止条件付贈与と1030条の「一年前」ほか
2.養子による遺留分減殺請求の権利の濫用

(抽出・加工あり。原文参照)

(二)〜弥吉は被控訴人に対し、昭和25年〜第二目録記載の不動産を贈与し、かつ〜第一目録記載の不動産も〜知事の許可を停止条件として贈与〜
〜昭和30年〜県知事に対し〜許可を申請〜、登記〜
〜1030条〜相続開始前の1年前〜贈与にあたるかどうかは、停止条件附で贈与の意思表示がされた場合であると否とを問わず、贈与の意思表示がされた時を標準として判断すべく〜意思表示〜が〜1年前であるときは、相続開始前の1年前〜贈与である〜。〜。

3〜控訴人は昭和2年〜弥吉夫婦と〜養子となつたが、〜協力し養家をもりたてていく気持が乏しく、家業の農業も怠りがち〜折り合いもとかく円満を欠き、そのうえ当時の経済不況も重なり〜所有していた約二町歩の自作田も昭和15年〜当時にはその大半が他人の手に移つたのみならず、弥吉はかなりの借財を負担するに至つた〜

〜控訴人は〜窮迫した養家に見切りをつけ、養家から独立して別個に世帯を設けて自己の恩給と成長した子供の働きとにより生活することを決意〜弥吉夫婦や親族等の熱心な引き留めもききいれず、養家の財産は一切いらないと言明し〜62才の養父〜と58才の養母チヨをあとに〜をあとに残したまま、妻子を連れて養家を立ち去り、以後、養父母を扶養したことのない〜、〜交際も全く絶ち、他人同様の関係〜、弥吉死亡の通知を受けながら、その葬儀にすら出席しなかつた。

〜養家では控訴人が立ち去つたため働き手を失い、家業の農業の継続はもとより生活の維持すらあやぶまれる事態に立ち至つた〜
〜親族相寄り協議〜分家筋にあたる弟〜の長男被控訴人を弥吉家に迎えいれることになつた〜
〜被控訴人は〜農業に精進し〜扶養に勉め、弥助の援助を得て弥吉の借財も整理し、弥吉家の再建に努力してきた。
そこで、弥吉は、その一切の財産を挙げて被控訴人に贈与し〜老後と祖先の祭祀を同人に託し、被控訴人は〜死亡までみとりその葬儀を営み〜現にチヨを扶養している〜

 〜控訴人は養家の窮迫時に、その窮迫について自己も一半の責任を負つているにかかわらず、身勝手にも、老令の養父母を見捨てたもので、養親子間の信頼関係を破壊する不信行為というべく、しかも、控訴人は、養家の財産は一切いらないと表明して養家を立ち去り、以後全く養子たるの実質を失いながら、本訴請求〜
〜信義にそむく行為〜養子とは名ばかりの控訴人の本訴請求は遺留分制度の趣旨にももとる〜、さらに〜専ら被控訴人の努力、精進により建て直された〜財産の分配を受けること〜養家の窮状を傍観しその再建になんらの力もかさなかつた控訴人に本訴請求を許容することは、衡平の原則にも反する。
〜権利の濫用〜