Genmai雑記帳

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株主リスト等に関するQ&A(日司連)

日司連から、株主リスト等についてのQ&Aが発出されました。
「商業登記規則等の一部改正に関するQ&A〔Ver.1〕」.........日司連ネット
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多くは既知のものですが、目新しいものとしては次のようなものがありました。
(抽出・加工あり。原文参照)
 

Q.19 株主の情報が把握できていないことがあった場合〜どうすればよい〜か。

A.19
法務省は,適法に株主総会が開催され〜議事録が作成されていながら,「株主リスト」のみ作成できないという事態は想定し難いと考えているよう〜上申書〜は検討していないよう〜。却下〜と考えられる。
〜過去の〜総会時の株主の情報の把握に努める必要〜。〜税務署〜申告書の閲覧〜も有益〜。

 かつて別な意味で検討したことがありますが、税務署は、基本的には、本人であっても閲覧させてくれなかったように思います。(保存期間も短いと思われます。) 決議内容にもよりますが、やむを得ない場合は、追認的決議を行うことを検討することも考えられます。
 

Q.21 株主に相続が発生〜,〜どのように記載〜。

A.21
〜どのように記載すべきかは〜総会〜に当たり〜会社が誰を株主として取り扱ったのかに従い記載する〜。
株主に相続が発生し,遺産分割協議が未了である場合〜相続人の共有となるから,株主の氏名+住所としては〜相続人全員の氏名+住所を列挙する〜。

この回答は多いに疑問です。
 
 会社法上からすれば、あたかも会社が、当然に、相続調査を行う義務があるとも読めるような、このような回答の仕方は非常に問題だと思います。
会社法106条126条③、130条などの規定から考えれば、相続届等をしない株主はそれなりの不利益な扱いを受けるわけであり、登記申請(手続)のために会社側が相続調査をしなければならないととられれば、会社にとっては大問題だと思います。

 あくまで、その総会の開催時に会社が株主をどう取り扱ったかと言うことを記載すべきであり、死亡者と知っていても、会社が死亡者宛に招集通知を送ったか(原則としてこれは有効と思います。126条)、相続人宛(会社の選択によっては相続人の一部宛)に送ったかと言うことにより、送った先を株主リストに書くことになるのだと思います。(下記の「住所」の問題と同じだと思います。)

 今回の改正は、「法人の所有者情報を把握して〜透明性を確保」すると言う犯収法的な意味合いも勿論あるわけですが、「商業登記の真実性の担保」と言うのが主な目的であり、「株主の本人確認」まで行う趣旨ではないと思われますので。(そう言うことなら会社法自体の改正が必要と思います。)

・・てなことを怒り半分で書いていたら、同様のことを
古橋清二大先生が静かに反論しておられ、また、内藤先生の記事でなだめられてしまいました。

(後日追記:この問題は、法務省が「場合分け」を示したことにより一応解決しました。→これ) 

Q.22 株主の現在住所が不明(〜長期にわたって〜到達しない)〜,住所はどのように記載〜。〜

A.22 〜会社が情報として把握している住所(株主名簿に記載されている住所)を記載すればよい。〜調査する必要はない。〜

 言ってしまえば、株主名簿にどこの住所を記載するかは株主の都合であり、住民票で確認するかどうかと言うようなものではないと考えています。(これって、私の誤解でしょうか?→(これとかこれ
 もっと言えば、株主名簿上の住所が旧住所であっても、会社が新住所を知っていてそこに招集通知を送ったのなら、新住所を書くべきだと思います。(この場合、法務局に出すにしろ、許諾のない個人情報を提出するのには抵抗がありはしますが。)

 

Q.25 複数の〜総会により〜登記事項が発生し〜一括して登記申請する場合〜

A.25 〜複数の〜総会により,複数の登記事項が発生し〜一括〜登記申請する場合〜登記すべき事項ごとに〜総会において議決権を行使することができる「株主リスト」を添付〜。ただし,一の〜総会において,複数の登記すべき事項について決議された場合〜同一である場合には,その旨注記して,一の〜リストを添付すれば足りる〜。

 一の総会内について認められる扱いが、なんで複数の総会間で認められないのか、説明になってませんね。福岡書式はこれを認めているように見えますが??)
 

Q.28 名義株主の記載はどのように〜。

A.28 原則通りである。

 これが実際の質問なら、「そんなこと聞くか?」と思ってしまう所ではありますが、しかしそれにしても、「こんな回答、ありか??」と言うところですね

なお、このQ&Aとともに発出された文書には、パブコメの回答が添付されておりますが、これについては、既に取り上げたものと同じです。(→これ

 以上を見ても、申請実務上は、株主リストの添付自体は大した問題ではなく、「どの範囲の株主を記載するか」とか「記載方法」などについては既に明らかであり、わざわざ研修するほどのことでもないようにも思えますが、

 むしろ問題は、実際の株主名簿の不整備をどう解決していくかと言う点にあると思われ、これは「会社法上の問題」と言うよりも「民事上の問題」であり、今後充分、ノウハウなどを検討する必要があろうかと思っております。

株主リスト等に関するQ&A(日司連)(Ver.2) - g-note(Genmai雑記帳)
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