Genmai雑記帳

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最高裁(新):借名契約による場合の所有権の移転先(公正証書原本不実記録罪)

平成26(あ)1197 電磁的公正証書原本不実記録,同供用被告事件
平成28年12月05日 最一小判
裁判要旨抜き書き

 土地〜売買契約〜所有権移転登記等の申請〜登記等をさせた行為につき電磁的公正証書原本不実記録罪が成立しないとされた事例

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(抽出・加工あり。原文参照)

(1) 暴力団員〜Bは〜会館を造ろうと考え,〜仲介業を営むCに〜土地探し等を依頼〜
(2) Bは〜暴〜排〜条例〜被告人に〜名義〜貸し〜依頼〜,〜
〜売買契約において被告人or被告人が代表取締役を務めるA社が〜名義人となり,〜登記〜申請することとした。
(3) 〜交渉,手続は,主にC+〜が行った〜,〜売主らとの間の売買契約〜の締結〜は,被告人もA社の代表取締役として〜立ち会い〜契約書〜作成〜その場で〜代金全額を支払った。
〜売主らは,契約の相手方がA社であると認識〜。〜売主らは,Bとは一切面識がなかった。
(4) 〜売主らからA社への所有権移転登記等〜がされ〜建物について〜所有者を被告人とする表題登記+所有権保存登記〜。
(5) 〜土地+建物の取得代金,登記費用など合計約1億2000万円の費用は全て,Bが出えん〜。

原審

(1) 被告人とBとの間に〜真実は〜Bが〜所有権を取得するにもかかわらず〜条例の適用を潜脱する意図の下にBの存在を秘匿して,A社を買受名義人として偽装する旨の合意が成立〜。
(2) 被告人は〜契約の際こそ立ち会っているが〜交渉,手続等は,Bの意向に沿う形で,主にC等が行っており,被告人は一切関与しなかった〜
〜実態は買受名義人を偽装した名義貸し〜。
(3)〜土地の所有権は〜売主らからA社が買主となって〜売買契約を締結した時に,被告人とBとの間の名義貸しの合意によって〜売主らからA社の名を借りたBに直接移転したものと認めるべき〜。
したがって〜登記の申請は虚偽〜,〜不実の記録である。

最高裁

1 電磁的公正証書原本不実記録罪+同供用罪の保護法益は,公正証書の原本として用いられる電磁的記録に対する公共的信用〜,
〜物権変動を公示〜により〜取引の安全と円滑に資するという不動産登記制度の目的を踏まえると,上記各罪の成否に関し,不動産の権利に関する登
記の申請が虚偽の申立てに当たるか否か,また,〜不実の記録に当たるか否かについては〜登記が〜民事実体法上の物権変動の過程を忠実に反映しているか否かという観点から判断すべきもの〜

〜本件〜が虚偽の申立てに当たるか否か,また,本件各登記が不実の記録に当たるか否か〜は,〜所有権が〜売主らから,Bに直接移転したのか,それともA社に一旦移転したのかが問題〜。

原判決は〜Bの存在を秘匿して,買受名義人を偽装した名義貸しであるとし〜実態を踏まえて〜所有権がA社の名を借りたBに直接移転〜と認めるべき〜とした。

しかし〜買主の名義はいずれもA社〜,被告人がA社の代表者として〜売主らの面前で,売買契約書等を作成〜代金全額を支払っている。〜
また,被告人がBのために〜契約を締結する旨の顕名は一切なく,〜売主らはA社が買主であると認識〜
〜そうすると〜契約の当事者は〜売主らとA社であり〜各売買契約により〜所有権は〜売主らからA社に移転したものと認めるのが相当〜

原判決は,被告人とBとの〜合意の存在を重視するが〜本件各売買契約における〜売主らの認識等を踏まえれば,上記合意の存在によって上記の認定が左右されるものではない。

以上〜所有権が〜売買を原因としてA社に移転したことなどを内容とする〜各登記は〜民事実体法上の物権変動の過程を忠実に反映したものであるから〜申請が虚偽の申立てであるとはいえず〜登記が不実の記録であるともいえない。