Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:公売の背信性

昭和29(オ)79 公売処分無効確認等請求
昭和31年04月24日 最三小判
裁判要旨抜き書き

一 国税滞納処分による差押については〜一七七条の適用がある〜。

二 登記の欠缺を主張する第三者がこれを主張するにつき正当の利益を有しない場合とは〜不登法四条五条により登記の欠缺を主張することの許されない事由がある場合、その他これに類するような〜信義に反すると認められる事由がある場合に限る〜。

三 〜滞納処分〜差し押えた場合に〜約三年六箇月前に〜不動産の譲受人から移転登記の未経由にかかわらず〜その所有に属する旨の財産申告を受け〜財産税を徴収した事実があつても〜国は、登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する第三者にあたらないとはいえない。

裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面・・・・原文
(抽出・加工あり。原文参照)

〜滞納処分として、登記簿〜名義〜不動産につき差押〜たまたま〜これよりさき、財産税実施の際に、被上告人からその所有不動産として財産申告があり〜財産税を徴収ずみであつた〜

〜財産税徴収当時の経緯を現実に熟知しながら、これを奇貨として差押を実施したとは考えられない。
〜財産税が一回限りの申告納税であつて〜約三年六箇月の日時を経過していたことを思えば〜登記簿上〜会社名義〜かつ〜さらに〜財産税施行当時に〜何人の所有として申告されていたかを調査しなかつたというだけで、直ちに〜国が登記の欠缺を主張することが背信的であるということはできない。

〜不服申立の手続等において〜さらに慎重な調査〜財産税徴収の誤りを認めて過納金還付の措置をとつた上で滞納処分を続行するか、それとも、財産税の徴収を正当とし差押の誤りを認めてこれを解放するか〜の措置を選ぶことが行政上妥当の措置であつたというべき〜

 けれども〜所有権の帰属を判定〜極めて困難〜直ちに財産税還付の手続をとることなく滞納処分の続行を図つたとしても〜背信的態度として非難することもまた行き過ぎ〜。

〜公売制度の信用を維持すべき国家の立場〜
〜競落人〜まつたく善意無過失〜もつとも保護に値する〜。〜三年六箇月前に〜財産申告をし財産税を納付したという事実は、競落人の利益をまつたく無視してよいということの理由になるものではなく、〜一般に〜登記の経由を怠る〜取引上通常被ることあるべき損失を免れることの根拠となるものでもない。
 〜公売制度の信用を維持〜および善意無過失の〜競落人の立場と〜登記の経由を怠つていた〜通常被ることあるべき損失を被ることはやむを得ないものとされる被上告人の立場とを比較考量〜

〜国が登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する第三者に当らないというためには〜足りず〜税務署長がとくに〜意に反して積極的に〜上告人の所有と認定〜等、〜税務署長から被上告人の所有として取り扱わるべきことをさらに強く期待することがもつともと思われるような特段の事情がなければならない〜

最高裁:背信的悪意者でないとされた例 - g-note(Genmai雑記帳)に有りましたので読んでみました。

 利益考量の上、強い背信性が認定されなければならない(特段の事情)、と言うのはわかりますが、
裁判官小林俊三の少数意見をサラリと読む限り(長いので半分くらいしか読まなくてこう言うのもなんですが)、大変、説得力のある明確なもののようでした。