Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

行政書士のHPについて

先般の行政書士による司法書士法違反事件に関連して、
平成23年3月、東京都行政書士会田無支部・IT委員会が発出した文書が公開されていたので見てみました。
ホームページの表現・表示について(東京都行政書士会田無支部・IT委員会)

(以下、抜き書きですので、正確に理解するために、上記原文をご参照下さい。)

〜全国の行政書士ホームページには,依然として法令等,とりわけ司法書士法並びに弁護士法に抵触すると思料される表現・表示が多く見受けられるところです。〜

1.「会社設立」に関する不適切或いは違法と思われる表示例
1)〜役員変更書類作成、商号変更書類作成、目的変更書類作成、増資書類作成、本店移転書類作成、有限会社から株式会社への変更書類作成
2)会社設立登記まで代行
5)会社設立は、行政書士の職分

問題点
1)「本人申請」であっても,登記申請書類の作成は司法書士の業務。(司法書士法第三条二号)(平成20年1月16日最高裁判所第二小法廷決定)
2)代行であるから申請代理行為ではない,との解釈はできない。業務(報酬の有無は問わない)で行う以上司法書士法違反の疑いがある。
5)株式会社について,会社法第四十九条は「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。」とし,「会社設立」がその成立までを意図したものであれば,行政書士の職分とは言えない。

2.「離婚問題」に関する不適切或いは違法と思われる表示例
2)慰謝料請求に関するトラブルを解決
3)離婚協議書に国家資格者の職印を押印致します。〜真正な契約を交わした証明となります。
5)私達が相手の代理人となり,公正証書の作成を行います。

問題点
2)「トラブルを解決」は「非弁行為」そのものである。
5)原則的に民法第百八条に違反する。〜

3.「紛争事案」に関する不適切或いは違法と思われる表示例
1)市民法務・トラブル解決,あなたのトラブルの解決をサポート
2)示談交渉のコツや進め方、その他示談に関する悩み等についてメールでのコンサルティング

問題点
1)「トラブル」と表示しているホームページが多いが,トラブルは「紛争事案」と解される虞があるので,注意が必要である
2)「示談交渉のコンサルティング」について,当該ホームページで報酬の要否を確認することができなかったが,業務として行うことには問題があると考える。

4.「戸籍謄本住民票の写し等職務上請求書」に関する不適切或いは違法と思われる表示例

1)住民票・戸籍謄本・戸籍附票など公簿の取得代行・取寄せ代行サービス
2)相続に必要な戸籍の取り寄せを全て代行致します

問題点
1),2)戸籍法第十条の2第3項は「受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。」としている。つまり,戸籍謄本等の取得は,それ単独で行政書士の業務たり得ないことに注意が必要である。当該ホームページには,取得代行のみを行う表示,また,取得代行のみの報酬額を表示している。取得代行のみに「戸籍謄本住民票の写し等職務上請求書」を使用することは,同法違反の疑いがある。(太字強調は、本ブログ作成者である私です。)
一方,戸籍法第十条第1項に記載されている者からの委任による代理人の交付請求は認められている。しかしながら,上記「取得代行」は,委任による代理行為であることを付言していないことから,「戸籍謄本住民票の写し等職務上請求書」を使用しての「取得代行」であることが推察される。よって,戸籍法に抵触すると判断する。

6.その他
ホームページではないが,ブログ上に「行政書士の代理権」に関する記述があった。そこでは「独自の見解」,少なくとも「定説」ではない解釈を披見している。
 また,成年後見制度に関しても,任意後見人(受任者),法定後見人等について,「資格」を要さないことから,「行政書士の業務」としているものが見受けられる。東京都行政書士会では一般社団法人成年後見支援センターヒルフェを,日本行政書士会連合会では一般社団法人コスモス成年後見センターを設立し,社団の社員による「職業後見人」としての地
位確立を図っていることから,社員以外の行政書士の「業務」であると積極的に是認していると解するのは難しい。
 上記「代理権」,「成年後見人」の解釈については,「人」の概念を「行政書士の資格業務」に持ち込んでいるが,「人」と「行政書士の資格業務」は,その根拠が全く異なることから,同一視して論ずることはできないと考える。

 「職域拡大をめざす」と言うことは、他の多くの資格にも共通のものかもしれませんが、特に、行政書士の方には、昔からこの傾向が顕著な方が少なくないようです。
 それは、利益追求のためなのでしょうか?
 それとも、もっと自分の力を発揮したい、自分(たち)には、その能力がある、と言った自負からなのでしょうか?
 行政書士も兼業する私としては、司法書士の職域拡大への意識との差が、あまりにも大きいようにも思え、一方で、共通している所もあるようにも思え、複雑です。

 しかし、それにしても、この文書は良く書けていると思います。(失礼ながら)
見解としては、必ずしも同意できない部分もありますが、職務上請求の問題や、専門家後見の問題などについての考え方など、司法書士としての観点からも、示唆に富む内容を含んでいると思いました。