Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

東京高裁:贈与の無効主張と遺留分減殺の時効起算点

昭和48(ネ)1238、昭和46(ネ)1488 土地所有権移転登記等請求控訴、同附帯控訴事件
昭和51年05月26日 東京高判
要旨抜き書き

〜減殺すべき贈与の無効を主張して訴訟が係属している場合でも〜全くなんらの根拠もない単なる言いがかりに過ぎないときは、短期消滅時効の進行〜

 もつとも〜Gは昭和41年9月〜控訴人を被告として〜贈与の無効を主張〜本件土地の所有権移転登記手続請求の訴を提起して訴訟係属中であつたことは〜明らか〜。

〜1042条にいう「減殺すべき贈与」があつたことを知つた時とは、単に贈与の事実を知つた時でなく、それが減殺をなし得べきことを知つた時を指す〜
遺留分権利者となり得る者が右贈与の無効なることを信じ訴訟上抗争しているような場合〜単に贈与を知つていたとしても、それだけでは「減殺すべき贈与」があつたことを知つていたものとは直ちに断定できない〜

が、訴訟上無効を主張さえすれば時効の進行を始めないことになると、民法が特別の短期時効を法定した趣旨にも反する〜
〜全くなんらの根拠もない単なる言いがかりに過ぎないことが明らかであるような場合には「減殺すべき贈与」を知つていたものと認めるのが相当〜

 本件〜Gが昭和37年〜本件土地を自らUに贈与して所有権移転登記を経由〜
〜しかも昭和41年1、2月頃からGは再三にわたりU所有の本件土地を控訴人に贈与して所有権移転登記を経由するよう同人らにすすめた結果、同年4月〜その実現を見たもの〜
〜右は他ならぬG自身の発意に基づいてなされたもの〜、
上記のようにGの不穏当な発言を控訴人の妻Sがたしなめたことをとらえて、Gは嫁に叱られた等と言い立て、病床に臥している妻Uの身を顧みずUを残して長男政幸宅に立ち去り、事を構えて、贈与が無効である等と不当な言いがかりを付けているに過ぎず、
結局、Gは、Uの死亡した昭和41年6月〜、本件土地につき減殺すべき贈与のあつたことを知つたものと認めるのが相当〜、一年の経過〜遺留分減殺請求権の消滅時効が完成〜。