Genmai雑記帳

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東京地裁:共同相続人の一人による消滅時効の援用

平成30年1月24日 東京地裁 抵当権設定登記抹消登記手続請求事件
平成29年(ワ)37334 判決
要旨

~債務を~1人が全て承継する旨の遺産分割協議が成立した場合~当該相続人に~債権者との法的対応を包括的に授権する趣旨~と解され~、~債務のうち他の相続人の相続分についての~消滅時効を援用することを含め~授権~と解される。(~時効消滅による抵当権の消滅~)

2 前提事実

(1)Aと原告は夫婦~本件不動産~を売買により取得~。
(2)Aと原告は~株式会社である被告~から~最終弁済期を昭和56年7月31日の約定で~円を借り入れ~抵当権設定~登記~
(4)~最終弁済期から5年(商法522条)が経過~。
(5)Aは、平成28年~死亡~。~遺産分割協議~により、原告が~A持分を~取得~。
(6)原告は、平成30年1月10日の~第1回口頭弁論期日において、被告に対し~被担保債権に係る債務の~消滅時効~援用~の意思表示~。

第3 当裁判所の判断

1 ~被担保債権に係るAの債務を原告が全て承継する旨の遺産分割協議が成立~
~遺産分割協議による相続債務についての相続分の指定は~債権者~の関与なくされたもの~債権者に対して~効力が及ばない~、各相続人は~法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには~応じなければならず~指定相続分に応じて~承継したことを直ちに主張することはできない。

2~しかしながら、上記のような遺産分割協議をした共同相続人の合理的意思としては、特段の事情のない限り、
共同相続人間において相続債務を単独で承継することとされた特定の相続人に相続債権者との法的対応を包括的に授権する趣旨であったと解され、
-上記特段の事情の認められない本件においても、C、Dは~Aの債務のうちC、Dの相続分についての~消滅時効を援用することを含めて、相続債権者である被告への法的対応を原告に包括的に授権したものと解される~
-原告は~Aの債務のうちC、Dの相続分についての~消滅時効も援用~できる~

~原告の上記援用の意思表示~が~原告の債務(~被担保債権に係るAの債務のうち原告の相続分を含む。)だけではなく~Aの債務のうちC、Dの相続分についても、その商事消滅時効を援用する趣旨であったことは明らか~。
したがって~被担保債権は昭和56年8月1日に時効消滅~付従性により本件抵当権も消滅~。

 
 単に、保存行為として(252条)、他の相続人(共有者)の消滅時効の援用権を認めているのではなく、元々の遺産分割協議の意思に、法的対応の授権も含まれていたがあったとするものですね。